中学受験を子供にさせるべきか
迷っている親御さんへ
中学受験は「親が過度に関わる」受験だという認識が大切です。
本当にお子様が中学受験に向いているでしょうか?
子供の性格や個性や学習スタイルを見て、
本当は中学受験がいいか高校受験がいいか判断するべきなのに
その判断を親だけがしていいのでしょうか?
中学受験に出題される問題の意図は、
考える頭・工夫できる頭を持っているかどうかの診断になります。
ところが出題意図とは裏腹に、入試には時間制限があるために
パターン学習で対応する方が合格の確率は高くなります。
ただしパターン学習の訓練を12歳までに徹底的に行うことが
お子様によっては大きな害になることもあるのです。
<中学受験で大切な思考力が潰されないために>
まだ身体が成長途中に筋力トレーニングをすると背が伸びなくなるように、
思考力をゆっくりじっくり焦らずつける時期に、
無理にパターン学習をさせすぎてしまうと
12歳以降で必要な思考力がつかないことがあるのです。
私も大手の中学受験塾で教えた経験があるので分かりますが、
特に集団授業は、受験問題を「こうやって解くんだよ。」と解き方のパターンを教えて
それを覚えるために、大量の宿題を出して反復させることをします。
受験自体の問題は良問なのに、あまりにも大量の問題パターンが中学受験にはあるので
それを「考えて解く」ことを求めるのでなく、
「パターンとして覚えてしまう」ことを求めるのです。
これだと受験勉強をすればするほど、普通の子どもは勉強が嫌になり、
そしてどんどん「考えない力」がついてしまいます。
本来この時期につけるべき思考力が潰されてしまうという恐ろしいことが起こるのです。
<中学受験で親子関係が崩れないために>
また、中学受験は高校受験や大学受験に比べて親が過度に関わらなければ受からない受験でもあります。
それは、中学受験が学校の授業では習わない問題や学校の授業よりも難しい問題が多く出題され、いくら大手の受験塾に通い教えてもらったとしても、よっぽど思考力や理解力が自身の年齢よりも早く成長していないと家庭で繰り返し解き方を覚えるということを長時間行わなければならず、それには家庭での親の学習マネジメントが必要になるからです。
また、まだ小学校の受験をする時期は、自我形成の途中の時期(=プレ思春期)であり、セルフコントロールが完璧にできる時期でもありません。
家庭で親が教えたり、学習計画を立てて「勉強しなさい!」と伝えていかないと合格が難しいのです。
そして親が過度に子どもが好きでない勉強を家で長時間強要することにより、親子関係に亀裂が入ることが最も危険な状態です。
本来、自我形成の時期は親が沢山子どものことを褒めてあげ、いいところを探して認めながら、心の栄養をタップリと与えることが重要な時期です。
そこから人生を生きる上で大切な自分を信じる力=自信がつくのです。
しかし、受験を通して子どものことを親が見るとイライラしてしまいます。
「何度教えても理解できない」
「塾に行っているのに問題が解けない」
「勉強する時間なのに動画ばかり見ている」
このような気持ちになり、その状態で子どもと接すると最後に言葉で子供にとどめを刺すのです。
だから、親御さんにお子様の発育発達や学習スタイルをしっかりと認識してもらい、中学受験がベストか高校受験がベストかちゃんと見極める目を持っていただきたいのです。
<子どもが中学受験に向いているかどう見極めるか?>
では、どうすれば自分の子どもが中学受験に向いているか判断できるのでしょうか?
ポイントは2つあります。
1つ目は「お子様の発育発達を知る」ということです。
6歳〜9歳・10歳〜12歳・13歳〜15歳
でお子様の脳は大きく変化をします。
その時期に合わせて、学習環境を変えたり
学習負荷を調整しないと、その時期に身につけるべき
学力の土台や思考力が身に付かなくなってしまします。
具体的には、6歳〜9歳は「具体的思考力」をつける時期です。
10歳〜12歳は「抽象的思考力」をつける時期です。
そして13歳〜15歳は「脳の鍛錬期」となります。
お子様がいまどの時期に、どのような学習環境を親が用意することが大切かを
親として把握して、中学受験がいいのか高校受験がいいのかを判断する必要があります。
2つ目は「お子様の学習スタイルを知る」ということです。
ハーバード大学のハワードガートナー教授は
人には8つのインテリジェンス(知性)があるといいます。
どのお子様も8つの知性をを持っていますが、
そのなかで得手と不得手があります。
簡単に8つのインテリジェンスをご説明するので、
ご自身のお子様がどこが得意でどこが苦手かイメージしながら読み進めてください。
1)論理的インテリジェンス
問題を論理的に分析したり、数学的な調査を実行したりする知性のこと。
論理的インテリジェンスが優れている子どもは、教科書の内容が基礎問題から応用問題へと、
徐々に難易度が上がっていくのに合わせて、順序立てて学ぶのが適しています。
2)視覚的インテリジェンス
空間を視覚的に認識する知性のこと。視覚的インテリジェンスは、目で覚えることに長けています。
たとえば単語を覚えるとき、文字の形や字面といったイメージでインプットすると、
よく覚えられるタイプです。
3)聴覚的インテリジェンス
音楽にまつわる知性のこと。聴覚的インテリジェンスに優れている子どもは、耳で学ぶのが得意です。
英単語を発声しながら覚えたり、授業の内容をくり返し聞いて理解したりするのが適しています。
4)内面的インテリジェンス
自分自身を理解する知性です。内面的インテリジェンスに長けていると、一人で机に向かって、黙々と学ぶことができます。
5)外面的インテリジェンス
他者のことを理解し、円滑に付き合っていくための知性のこと。外面的インテリジェンスは、
誰かと一緒に学ぶことを得意とします。学習するとき、
周りの誰かに問題を出してもらったり、友達同士で内容を確認し合ったりするのが適しているタイプです。
6)身体的インテリジェンス
問題を解決したり、何かをつくり出したりするときに、身体全体を使う知性です。
身体的インテリジェンスが優れている子どもは、身体を動かしながら学ぶのが適しています。
7)博学的インテリジェンス
さまざまな知識を比較、検討して、問題を解決する知性です。
いろいろな解釈がありますが、自然から学ぶのが得意な子どもは、
この博学的インテリジェンスが優れているといえます。
登山をしながら生えている植物の名前を覚えたり、旅行に行った先で特産物を覚えたりするタイプです。
8)言語的インテリジェンス
話し言葉と書き言葉に関する知性のこと。
言語的インテリジェンスに長けている子どもは、教科書の文章や教師の話など、
言葉を通して学ぶことが得意です。
いかがでしょう?
中学受験は負荷のかかる受験と話しましたが、
論理的インテリジェンスと言語定期インテリジェンス、
内面的インテリジェンスが高いお子様は、
あまり負荷がなく無理なく(=弊害が少なく)中学受験ができます。
反対に、身体的インテリジェンスと対面的インテリジェンスが高いお子様は
中学受験により過度なストレスがかかってしまう可能性があるのです。
自分の子供が、どのインテリジェンスを得意しているかを知ることにより
中学受験で頑張らせるべきか、そうでないかの判断ができるのです。
<最後に>
お子様を「中学受験がしたい!」と言わせるのは簡単です。
私も大手の学習塾にいたのでわかりますが、
体験授業にきた生徒に対して、簡単な受験問題を解いてもらい
「きみこの問題が解けるぐらいだから中学受験にむいているよ!」
といえば子供はその気になり受験したいというのです。
そしてその言葉に親は喜び、子どもの判断で中学受験を
気軽にしてしまうのです。それが大きな弊害になることもあるのにです。
だからこそ、しっかりと今回の2つのポイントを理解していただき、
親御さん自身が子供の発育発達や個性・知性をしっかりと把握した上で
中学受験をさせるべきかどうかを決めてください。